ミッドナイト太極拳

深夜――牛乳を買って帰る途中、公園で一人太極拳に励むオヤジを見かけた。
なぜ太極拳かというと、手のひらで描くなめらかな円、「ぬぅ~」と超低速で上がる足、四肢の曲線運動が、非常に太極拳っぽかったからよ。俺は興味を持ち、そのオヤジを一瞥することにした。
すると何だ、オヤジは「はっ!」と、俺の視線に一瞬で気づき、なめらかな動きをピタリと止め、俺に視線を向けた。暗いからオヤジの瞳は見えない。だがその殺気のこもった視線は、正確に俺の瞳孔を捉え、オヤジは既に戦闘態勢に入ってる。
俺は「何なんだこのおっさんは?」という思いを胸に抱き、素通りした。
だがちょっと俺が視線を向けただけで、すぐに危険を察知、俺に照準を合わせたのはお見事(畏)
かなりの太極拳使いとみた。
今度「たのもぉ~!」と、手合わせ願うかな。
俺は「棒術」とか使いたい、餓狼伝説のビリーカーンみたいにな。
深夜一人で公園で太極拳の練習に励むってのはよ、いいことなんかいな。
PRIDEとかK-1みたいに、異種格闘技やった方が夢がある気はするんだが。
まあ別に格闘技で成り上がろう、太極拳やるのは健康のためだったり道楽だったり、それをメシのタネにするってわけでもないんなら、いいのか。余計なお世話だな、うん。
中国の奥深い山とかで拳法の練習に励んでる日本人、どれぐらい強いんだろう。昔、ケイン・コスギも筋肉番付で少林寺留学してたから、何となくカッコいい。
おっさんが太極拳してたのは、使用済みダンボールが散乱して、あんまいいステージではなさそうだったけどな。
けど孤独に汗流す時間ってのは大切だよな。真夜中のトレーニング、俺も嫌いじゃないよ。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

トップページ(低価格ヒルズ)に戻る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です